「はじめて、はじめました。」暮田マキネ

父を亡くし、5人兄弟の長男として働いてきた鴇は、母の再婚を機に「自分の人生を幸せに生きてほしい」という家族の願いに応えるため、27歳で通信制高校に入学した。
そこで出会ったのは、弟の友人で元子役の俳優・尭良。スキンシップが多くて世話焼きな尭良と「お兄ちゃん」でなくていい時間を過ごすうちに、鴇には友達以上の感情が芽生え始めて……。初めての恋と「幸せ探し」を抱えた通信制高校生たちの暖かく心に染みわたるセンチメンタルラブストーリー。

19歳 芸能活動をしている
母親と険悪中



27歳 通信制高校へ入学
5人兄弟の長男
レビュー
27歳で通信制高校へ入学、現実味を感じるテーマで凄く良かったです。
通信制高校といっても鴇は通学しているので、通学タイプです。通信制高校しかり定時制高校しかり、年齢関係なく通えるのは良いこと。
世襲した飲食店で働き詰めだった父親を突然失い、残された母と幼い兄弟を守るため高校進学をせずに身を粉にし働いてきた鴇。母親の再婚を気に「自分の人生を歩んで」と母親の言葉で、通信制高校へ入学し弟の友人である尭良と出会う。
母親の言葉に「え、」と思いました。兄弟が多いので、長男である鴇の手を借りるのはわからなくもないけど、再婚した途端「自分の人生を」というのは何だか身勝手な話じゃないかと。
鴇は「してあげる」ばかりで「してもらう」ことには慣れていない。作中の言葉が悲しかったです。
鴇にとって自分は二の次、まずは家族のために。
そうやって生きてきた鴇が今手にした自由は、本人ですら感じられない大きな戸惑いや不安の中にあるのだと思うと胸が締め付けられる気持ちです。
尭良も芸能活動での上手くいかない環境やステージママの母親との葛藤の中に身を置いていて、鴇との出会いがやる気への再熱と温もり、安心感を得る良い機会になっていました。尭良が幾度となく鴇に胸キュンしているのわかりみが深い。
本作にえちなシーンはありません。キスのみなので、えち苦手だなって人も安心して読めます!
個人的にはえち無しで良かったと思います。
2人とも初キスをしているので、もちろんそれ以降の経験もなく・・・
特に鴇の境遇を考えれば、1冊の中で急いで致すシーンを作らない方が物語を大切に作っている感じがして、個人的にかなり好感度が高かったです